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title.絨毯の仕入れ!

date.2013.12.02 category.ITEM


絨毯の仕入れへ行ってきました!
妻とファロをおともに。
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都心から車を走らせ、2時間程で到着。
此処は、イランの人たちが現地から仕入れてきた絨毯をメンテナンスして、ストックしている場所。
現地にて一枚一枚厳選して来た絨毯を丁寧に洗浄し、シャーリング、しみとり、パイルや房の修理など
専門の職人が丁寧に加工を行っています。


20年〜30年前の古いものから、現在生産されているもの
中には美術館クラスの何百万円もするシルク絨毯まで、、、。
膨大な量の絨毯が畳まれてストックしてあります。
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まずはキリムを一枚ずつ広げてチェック。
これはビンテージの物です。
元々コンディションの良いものだけを選び、更に丁寧にメンテナンスされているので
どれも本当に綺麗で、しっかりしています。
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自然由来の染料で染められたとは思えない程、鮮やかな色味です。
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ストップをかけられ
ぽつんと椅子の上で待つファロ。
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ウールを紡いで織上げられた絨毯達には
キリム、ペルシャラグ、ギャベ、と
種類やその織り方、厚みや使い心地がそれぞれに異なります。
今迄、c:hordでもキリムやペルシャラグなど様々な種類のラグを沢山ご紹介し販売してきましたが、
なかなか仕入れる事が出来ずにいた物がギャベ(gabbeh)です。
これは、イラン南部のファルス地方で今でも遊牧生活を送る、カシュガイ族の女性たちが昔から織り続けている
ふっくらと厚みのある絨毯です。
現在その使い心地の良さから、日本の一般家庭でも少しずつ使われる様になったギャベ。
ネット通販などで安価に流通している物の中には、非常にカラフルでかわいらしい動物柄の入った科学染料で染められた物など
も多く、中にはイラン現地で本当に手織りされている物ではない、中国製などのレプリカも多く出回っているそうです。


今回、私が見つけたのはカシュガイ族の手織りギャベの中でも、羊の毛を染めずに自然な色のまま織り上げたもの。
元の羊の毛の色である、アイボリー、ブラウン、ダーウブラウン、ブラックの色が何とも言えない濃淡の美しさを描いています。
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まず、その厚みがものすごい。。
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絨毯に乗った感触は、まるで羊の背中を歩いているようです。
こんなに分厚いウールのラグなので、冬は勿論暖かいのですが
綿密にぎっしり織られている為、夏も涼しく使えるのが本当に不思議です。
私自身が長年愛用している一枚も、自室に敷いてオールシーズン使用しています。
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写真ではなかなか伝えられないのですが、このナチュラルな毛の表情は本当に美しいです。
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この柄の名前であるアブラシというのは、グラデーションという意味。
まさに、ギャベの模様はこの雄大なイランの大地に映し出される風景の陰影その物という感じ。
イラン特有の、木の殆ど生えていない剥き出しの地層や平原からのインスピレーションが投影されているのです。
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このアブラシのギャベには思い出があります。
まだ私が二十代半ばで、大きなアンティークショップに勤めて絨毯の仕入れ担当をして居た頃の事
その時代は、おばさまが好みそうな典型的なメダリオン柄のペルシャ絨毯が主流だったので、そういう傾向の
ものを主体に商品セレクトしていました。
ある日、商品選定が終わって別のコーナーにふと目をやると、ひと際厚みのあるギャベのストックがあり
初めてギャベを見て興味を持った私に、ディーラーの方が商品の説明をしてくれました。
その中に、一枚だけ模様の無いダークブラウンのグラデーションが美しく、ずっしりと重い不思議な絨毯を見つけました。
それがアブラシのギャベとの最初の出会いでした。
その絨毯はローリーバフト族の織った物で、結びも細かく全体に艶があってビロードの様に光って見えました。
ローリーバフト族のギャベは、カシュガイ族の物よりも織り目が細かく、品質が良いとされ
落ち着きあるデザインが多い最高級のもの。
寒暖差の高い地域で育った子羊の冬を越えた後の毛を使用するので、きめ細かくなめらかな手触りが特徴だそうです。
この何の柄も無く、どこか朴訥としていて異様な程にずっしりと重い絨毯は、その時の私には非常に特異なものに思えました。
しかし、何とも言えないオーラというか迫力があり、実物に触れているうちに本当にかっこ良く見えて、仕入れて店に持ち帰る事
にしました。

翌日、店内に展示してアンティーク家具達と一緒に眺めていると、より一層欲しくなって仕方がありませんでしたが
すぐに若者が手を出せる金額でも無くて、せめて誰かこの良さを分かってくれる自分のお客様に販売したい!と思い。
その頃の私の顧客であった、有名なシェフの男性に連絡をしました。
其の方は、いつも私がすすめるアンティークを気に入って購入してくださっていて
そのギャベも、実物をしばらく確認して即決!その日の内に御持ち帰りされる事になりました。
その方の愛車のジャガーまで担いで運んで行って、後部座席のトランクに積み込み、車が走って行くのを見送った日の事を、
いまだに忘れられません。
何よりも、後日再度ご来店されて、
「実際に敷いて使っているけど、あのラグは本当に良いよ!自然に家族皆があの絨毯の上に集まってしまうんだ。」
と言って頂きました。ちょうどその頃に御引っ越しされた横浜の洋館には、暖炉があるとお聞きしていたので
その前で、ギャベを敷いている家族団らんの素敵な情景が目に浮かびました。
華美でないが、良い素材に技巧をつくして丁寧に作られた本物を手に入れて、それを長年大切に使っていく。
まさに、男の買い物の姿を見せてもらえた気がしましたし、そういう物を販売出来た事が
自分自身でとても嬉しかったのを覚えています。

そんな思い出もあり、このアブラシのギャベは私にとって色々な意味でとても記憶に残る物であり、
その後なかなか巡り会う事の出来なかった商品でした。

それ以降、たくさんのギャベを目にしてきましたが、最初の出会いの印象が強烈すぎたせいもあり
いまひとつ仕入れて販売する気になれる物とも出会えずに、ずっとc:hordの商品として取り扱う機会がありませんでしたが
今回、開いた瞬間に嬉しくなる様な、当時のあの記憶がよみがえる様な
本当に自分でも欲しいと思える良質なアブラシ柄のギャベを沢山仕入れる事が出来ました!
サイズも色もバリエーション豊富です。

明日、葉山で一枚一枚商品撮影して来ます。
サイズや金額などの詳細は、近日中にホームページにアップ致します。


例えば、この一枚!
カッコいいです。。。

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240cm×170cmの特大サイズ。
毛質も最高です。


これ以外にも様々なサイズと柄のギャベや、オールドギャベ
オールドのトライバルラグや、キリムなどなど
過去最大量のラグを一気に集めて、c:hordラグフェアーを開催致します!

開催日や、商品内容などは近日中に告知致しますので、是非おたのしみに。
きっと、皆さんにとって一生物になる素敵な絨毯に巡り会えるはずです。


これは、1996年のイラン・フランス合作映画【 gabbeh ギャベ 】
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イランの遊牧民の女たちが織る素朴な一枚のギャベという絨毯に、一人の若い娘の恋模様を重ね合わせて描いた映像が
非常に色彩豊かで幻想的です。

いま再び、もう一度観てみたい映画です。